大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

千葉地方裁判所 昭和45年(わ)468号 判決

主文

被告人を懲役八月に処する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

起訴状記載の公訴事実と同一であるから、これを引用する。

(証拠)(省略)

(弁護人の主張に対する判断)

弁護人は、被告人については公訴事実第二の報告義務違反の罪は成立しないと主張する。しかし、被告人が被害者を病院に運んだ直後その場を立ち去つた際、たとい事故現場の交通秩序はおおむね回復されていたとしても、その段階で警察官は本件交通事故の具体的態様(犯行のそれではない)を知り事故をいわば管理する利益を失つていないものと認められ、このような場合報告義務を免れるものでないことは検察官指摘の判決例(東京高裁昭和四五年(う)第一七六六号同年一一月一一日判決)のいうとおりと考えられる。弁護人の主張は採用できない。

(法令の適用)

公訴事実第一 刑法二一一条前段、罰金等臨時措置法三条一項一号(懲役刑選択)

同   第二 道路交通法七二条一項後段、一一九条一項一〇号(懲役刑選択)

同   第三 道路交通法六四条、一一八条一項一号(懲役刑選択)

併合罪の加重 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四七条但書(重い右第一の罪の刑に法定の加重)

訴訟費用 刑事訴訟法一八一条一項本文

別紙

起訴状記載の公訴事実

被告人は

第一 自動車運転業務に従事しているものであるが、昭和四五年五月二五日午後九時三〇分ころ軽自動四輪車を運転し、千葉市生実町一、八二七番地先道路を同市椎名崎町方面から生実町方面に向かい時速約四〇キロメートルで進行中約一五メートル前方道路左側の道路のくぼんだ部分を避けるため、道路の中央から右側部分に寄ろうとした際約一九・七メートル前方道路右側を対向して来る前田昌作(当四一年)運転の原動機付自転車を認めたから、ただちに徐行するか停止し対向車の通過を待ち進路の安全を確認して進行すべき業務上の注意義務があるのに、これを怠り、漫然前記速度で道路右側を進行した過失により対向車に接近して急制動したが及ばず自車右前部を前記前田昌作運転車両に衝突させ、よつてその衝撃により同人に加療約四カ月間を要する左下腿挫滅創、両大腿擦過傷、右膝関節内障、右手第二、三指擦過傷の傷害を負わせた、

第二 前記日時、場所において前記交通事故により前田昌作に前記傷害を負わせたのに、右事故の発生日時、場所等法令の定める事項をただちにもよりの警察署の警察官に報告しなかつた、

第三 公安委員会の運転免許を受けないで前記第一記載日時、場所において軽自動四輪車を運転した

ものである。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例